高等部ブログ
才能がないという思い込みを、一度手放してみませんか?
2026/07/07
ガイダンス・セミナーこんにちは、リード予備校の佳山です。
7月5日(日)の夜、夏の特別セミナー「才能vs努力」をZoomで実施しました。日曜の20時半という遅い時間帯にもかかわらず、約100名の方が参加してくださいました。高校1・2年生が中心で、なかには他塾に通っていない生徒や、保護者だけで耳を傾けてくださったご家庭もありました。
参加者の満足度
満足 72.7%
やや満足 24.4%
どちらでもない 2.9%
不満 0%
テーマは一言でいえば、「才能がないという思い込みを、一度手放してみませんか」ということです。
多くの生徒が、成績の伸び悩みを「自分には才能がないから」と説明してしまいます。けれど、その説明は本人にとってあまり得になりません。才能のせいにした瞬間、打つ手がなくなってしまうからです。このセミナーで問い直したかったのは、まさにそこでした。
「才能vs努力」——このセミナーで問い直したかったこと
夏期講習に向けて、私たちは「**飛躍の夏・挑戦の夏**」という言葉を掲げています。大切なのは、自分の能力を伸ばせると信じること。そして、効果のある学習法を実践すること——この2つです。
手がかりにしたのは、ペンシルベニア大学の**アンジェラ・ダックワース**教授の考え方です。彼女は達成を次の式で説明しました。
**才能 × 努力 = スキル**
**スキル × 努力 = 達成**
ここで注目したいのは、**努力が二度登場する**点です。努力はスキルを育て、さらにそのスキルを成果へと変える。だからこそ、仮に才能が二倍ある相手でも、努力が半分であれば最終的には追い抜かれ得る——本来は勇気の出る話なんですよね。
ダックワース教授自身もこう述べています。「2倍の才能があっても1/2の努力では負ける」。才能が人の2倍あっても、半分しか努力しない人は、長期的な成果では努力家に差をつけられてしまう、と。
とはいえ、「努力が大事」という結論だけでは、生徒は動けません。「では、**どう努力すれば伸びるのか**」。この後半の各論にこそ、時間を割きました。数字の羅列で終わらせず、明日の机に向かうときに何を変えられるか、という水準まで落とし込んだつもりです。
能力は伸ばせる——100年の記録が示すこと
セミナーの前半では、フロリダ州立大学の**アンダース・エリクソン**教授の研究も紹介しました。30年以上にわたり、世界トップレベルのアスリートや科学者を調査した結果、彼はこう結論づけています。**才能は生まれつき備わっていて、適切な方法で引き出せるもの**——固定的な能力ではない、と。
具体例は意外と身近です。
– **マラソン**:1908年の世界記録2時間55分18秒に対し、2023年は2時間2分16秒。約100年で記録は30%近く短縮されました。
– **飛び込み**:1908年に2回転宙返りが禁止された技術が、今では小学生ができる初級技術になっています。
– **円周率暗記**:1973年の511桁から、2015年には10万桁へ。42年で200倍近い水準に。
ここ100年で、長距離走や記憶の「才能」を持った人が急増したのでしょうか。エリクソン教授の言葉を借りれば、**「練習したのだ。それもけたはずれの量を」**——そう説明する方が自然です。
現在の脳科学・心理学では、能力は固定的ではなく伸ばせる。生まれつきの才能しか説明できないという証拠はなく、逆にそうでない証拠は山ほどある——この前提を、セミナーでは丁寧に積み上げました。
「才能」は初期だけ——チェスとIQの研究
「でも、最初からできる人がいる」と感じる場面も、確かにあります。
2006年、オックスフォード大学の研究者ら(Bilalic, McLeod, Gobet)は、**57名**の若年チェスプレーヤーを対象に、IQと練習時間の両方を調べました(*Intelligence*, 2007)。結果は明快です。**生まれつきのIQは初期段階では影響するものの、成功を左右する最大の要因は練習**でした。エリート23名の分析でも、IQより練習量が決定的でした。
IQの高さが有利に働くのは、**初期段階だけ**。長期的に勝つのは、より多く練習した者——このパターンは、音楽、口腔外科、タクシー運転手、科学者など、他分野の研究でも繰り返し確認されています。
受験勉強も同じ構造を持っています。高1・2では「学習の量」、高3では「学習の質」——大学によって必要な勉強時間の差は、学年が上がるほど縮まっていきます(データ出典:Study plus)。量の差が実力差として残るのは、主に高1・2の段階なのです。
「普通の練習」から「目的のある練習」へ
エリクソン教授が提唱する**目的のある練習(デリベレート・プラクティス)**は、セミナー後半の軸になりました。練習には大きく3段階があります。
- **普通の練習** — 繰り返すうちにある程度のレベルには達するが、頭打ちになる
- **目的のある練習** — ここを意識すると、かなり上位に入れる
- **限界的練習** — 世界トップの領域
多くの受験生が止まってしまうのは、①の「普通の練習」の段階です。経験を積むだけでは高度な能力は身につきません。医師の技能に関する60以上の研究でも、年長の医師ほど治療の質が劣化する——あるいは同じレベルにとどまる——という結果が報告されています(K. Niteesh et al., *Annals of Internal Medicine*, 2005)。
では、②の「目的のある練習」とは何か。セミナーでは4つのポイントに整理しました。
| ポイント | 内容 | 勉強での例 |
| Ⅰ 具体的目標 | 長期目標を小さなステップに分解する | 夏休みの週ごとの到達目標 |
| Ⅱ 集中して行う | 短時間×分散で質を上げる | ポモドーロ、インターリービング、自習室の利用 |
| Ⅲ フィードバック | 未熟な部分を正確に特定する | テスト、面談、白紙復習(リトリーバル) |
| Ⅳ コンフォートゾーンから出る | いつもより少し高い負荷をかける | 勉強時間の増加、クラスレベルの引き上げ |
アンケートでも、この4点が具体的な行動に結びついていました。「フィードバックや自習室の利用、インターバルは実践しようと思った」「白紙に学んだことを思い出して書き出すことを今日から実践していきたい」——そう書いてくださった声が複数ありました。
学習科学が示す、効果の高い勉強法
セミナーの締めくくりでは、学習科学の知見も紹介しました。幅広い研究で効果が確認されているのは、主に次の3つです。
– **テスト(自己テスト)** — 理解度や記憶を確認する手段。実力試しだけでなく、学習そのものに組み込む
– **インターバル(間隔反復)** — 一度学んだ内容を、時間を空けて復習する
– **リトリーバル(想起練習)** — 何も見ずに、頭の中から知識を引き出す
一方、「読み直し」「線引き」「まとめノート」などは、一見効果がありそうに見えても、エビデンスのレベルが低い——あるいは世代・分野によって効果が限定的——という勉強法もあります。努力の方向を間違えると、時間だけが過ぎていく。だからこそ、**何を変えるか**を知ることが大事なのです。
Donoghue & Hattie(2021)のメタ分析では、リトリーバル(想起練習)の効果量は**d=0.8**前後と報告されています。Cohenの基準で「大きな効果」に相当する数値です。リード予備校では、映像授業後のレビューノートや逆授業、フィードバック面談を通じて、この考え方を日常の学習に組み込んでいます。
**補足**:本セミナーの内容は、通塾生向けの**リード式キャリア教育**(高1 10回・高2 5回)でも体系的に扱うテーマです。ブログやセミナーは入口であり、授業ではワークとして深掘り・実践します。
生徒の声——「才能」の順序が、静かに揺らいだ
セミナーの手応えは、私の自己満足では測れません。生徒がどう受け取ったか——アンケートの言葉に、それがよく表れていました。
> 才能を必要以上に意識しなくてよいとは驚きがありました。
> 才能は努力よりも強いというのが一般的な考え方だと思っていたが、本来はその逆だということを初めて知れた。
この二つは、まさに核心に触れてくれています。「才能が上で努力が下」という順序が、そもそも逆かもしれない。その前提が一度揺らげば、勉強への向き合い方は静かに変わっていきます。
そして、勉強法の各論も、ちゃんと届いていました。
> 努力しているが、効率の悪い勉強方法なのではないかとずっと疑問に思っていました。エビデンスに基づいた、具体的な勉強方法を教えていただき、今日から実践したいと思いました。
> フィードバックや自習室の利用、インターバルは実践しようと思った。
> 白紙に学んだことを思い出して書き出すことを今日から実践していきたいです。
印象的だったのは、「**今日から**」という言葉が複数の回答に共通していたことです。理解が納得に変わり、納得が行動の意思に変わる。この移り変わりが、短い文面の端々に見て取れました。
満足度は、「満足」「やや満足」を合わせて**39名(全体の95%)**でした。「どちらでもない」は2名。日曜の遅い時間にこれだけの手応えが返ってきたことを、素直に嬉しく受け止めています。
「闇雲に」から「目的を持って」へ
学年ごとに、受け取り方の違いもありました。
人は才能よりも努力の方が効果的であるということを今日知り、自分もこの夏休みに学習法や勉強時間を増やして第一志望合格に向かって頑張りたいなと思った。
> 闇雲に勉強している感じがあるので、目標や計画を立てて勉強に取り組めると良いと思いました。
「闇雲に」から「目的を持って」へ。この一語の差が、実際の伸びを大きく左右します。がむしゃらさは尊いのですが、それだけでは疲弊で終わってしまうこともある。方向を定めた努力へと切り替えられるかどうかが、夏の分かれ目になります。
保護者の方の声——支え方まで変わる
保護者の方の声も、別の角度から示唆に富んでいました。
> 学習にダレてきた子どもが、これからの励みになったと思います。
> 努力しただけ自信になるということでがんばって欲しいと思います。具体的なデータや例えがわかりやすかったです。
> 知っていると知らないとでは、支え方にも影響してくると感じました。
最後の一言は、本質を突いていると思います。努力の続きやすさは、本人の意志だけで決まるものではありません。隣で支えるご家庭が同じ理屈を共有しているかどうかで、支え方の言葉が変わり、家庭内の空気も変わります。だからこそ、保護者の方にも同席いただけるプログラムにしています。
夏は、努力の「方向」を整える季節
夏は始まったばかりです。「才能がないから」と自分の可能性に線を引いてしまう前に、努力の方向をひとつ整える。それだけで、この数か月の景色はずいぶん変わるはずです。派手な近道を探すより、そのほうが結局は速い——というのが、この夜いちばんお伝えしたかったことでした。
リード予備校の学習に関するイベントや説明会の情報は、[公式サイト](https://lead.gr.jp/)やSNSでもお知らせしています。勉強の進め方や進路について、具体的に相談したい方は、[お問い合わせフォーム](https://lead.gr.jp/contact/)からもお気軽にどうぞ。
## 参考文献
– アンジェラ・ダックワース『やり抜く力 GRIT(グリット)』(神崎朗子 訳、ダイヤモンド社、2016年)
– アンダース・エリクソン、ロバート・プール『超一流になるのは才能か努力か?』(塩野誠 訳、ダイヤモンド社、2016年)
– Merim Bilalic, Peter McLeod, Fernand Gobet, “Does chess need intelligence? A study with young chess players.” *Intelligence* 35 (2007)
– K. Niteesh et al., “Systematic review: The relationship between clinical experience and quality of health care.” *Annals of Internal Medicine* (2005)
– Donoghue & Hattie (2021) — リトリーバル(想起練習)の効果量に関するメタ分析
– Roediger, H.L. et al. (2006) “Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention.” *Psychological Science*, 17, 249-255


























































