高等部ブログ
リード通信Vol.8 バックナンバー (2022年6月)
2023/04/07
こんにちは、忠節校舎で英語を担当している高橋です。
昨年6月のリード通信バックナンバーをアップしておきます。情報は当時のものなのでご注意ください。
忠節校限定! リード通信Vol. 8 (2022年6月号)
(なるべく)毎月1日送信。ただしいつまで続くかは??
1、今月の予定(省略)
2、今月のお話
前回のリード通信の「今月のお話」の最後に、私は「宝物は宝箱を開けてみて初めて宝物だと分かります。」と書きました。(1か月前の話なので覚えていない人も多いと思いますが(笑)。)
しかし、これは本当は正しくありません。
実際は、ただ宝箱を開けただけではそれが宝物かどうか分かりません。
それが宝物だと分かるのは、宝箱を開けたずっと後になってからです。
アップル創設者スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式での伝説のスピーチをご存知でしょうか。知らなかった方はぜひ読んでそして聞いてみて下さい。
(リンクはこちら:https://news.stanford.edu/2005/06/14/jobs-061505/)
3つのパートからなっていますが、ここで皆さんにお伝えしたいのは「connecting the dots」という最初のパートです。
簡単に内容を説明すると、ジョブズは大学に進学したものの、貧しい家庭の出だったので授業料を払えず中退します。しかし、その後も聴講生として興味のある授業を受講していました。カリグラフィーという文字のデザインについての授業でしたが、当時はただ興味があっただけで、それが将来どう生かされるかについては何も考えていなかったそうです。
10年後、彼が最初のマックのパソコンを設計していたときに、当時学んだことが全て彼の頭の中によみがえり、彼は様々な美しいフォントが使用できるパソコンを世界で初めて開発することができました。
ここでポイントは、彼が大学時代にカリグラフィーの授業を受講したのは、それが10年後に役に立つと分かっていたからではない、ということです。
彼はスピーチの中で、「先を見越して物事を結ぶことはできず、後になって振り返って初めて、物事が繋がっていることがわかる」と言っています。
今やっていることが将来どう生きるかは、やっているときは分かりません。むしろ、将来生かされたときに初めて、過去にやったことに意味があったことが分かるのです。
そして、この一番の代表格が「勉強」です。
実は、私は自分の人生において、1つ大きな失敗をしています。
私は高校生の最初のころは数学が比較的得意でした。しかし、数学をやる意義をどうしても見出せず(「こんな記号、将来何に使うんだ??」と思っていました)、高2のときに完全に数学を捨ててしまった時期がありました。
私は大人になってからずっと、そして今でもこのときの決断を後悔しています。
タイムマシンがあれば、過去に戻って、高校生の私に「数学的思考は仕事に大いに役に立つし必要だ。だから、つべこべ言わずにやれ!!!!!」と、どなりつけてやりたいです。
「それ」が宝物だったとわかるのは、たいていずっとずっと後のことなのです。だからこそ、高校生のような若い人たちに、私と同じ間違いを犯してほしくないです。
皆さんには、「自分にとって役に立つかどうか」の判断をするのは「今ではない」ということを伝えたいです。
高橋
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3、田辺の一冊 田辺の独断と偏見で本を紹介します。
今回紹介するのは、バルザック『ゴリオ爺さん』です。
この前のGWのときに読んだ作品です。
最初の50ページは延々と舞台説明と人物説明が続くので読むのが大変ですが、
そこから先はものすごく面白く、あっという間に読み終えてしまいました。
製麺業で財をなしたゴリオ爺さんは、美しい娘二人を溺愛し立派な相手と結婚させます。
しかし、娘たちはそんな父を金のために利用することしか考えておらず、
ゴリオ爺さんは娘の華やかな生活の為に自身の生活をぎりぎりまで切り詰めたあげく、
最期を娘に看取られることもなく死んでいくという大筋で、
ゴリオ爺さんと同じ宿に住む人物たち、
田舎から家族の期待を背負ってパリにやってきてゴリオ爺さんの娘に恋をする青年ラスティニャックや
謎の悪党ヴォートランなどが、それぞれの考えをもって動きまわる……といった内容です。
「とんでもないばかな真似をさせるか、たいへんな成功を収めさせるかどちらかである、あの若々しい無鉄砲さで、彼はつぶやいた。~無謀な青年よ!彼はマクシム・ド・トラーユ伯爵がわざと相手に侮辱させておいて、決闘で自分から先に発砲し、相手を殺してしまう男だということを知らなかったのだ。」
「何かの不幸がこちらの身に降りかかると、すぐに友達顔してやってきて、そのことを知らせてくれ、短刀でこちらの心臓をぐりぐりとえぐっておきながら、短刀の柄の素晴らしさを自慢する人が、いつだっているものなのね。」
「男も女も、宿駅ごとに乗りつぶして捨ててゆく乗継馬としてしか、受け入れてはなりませんの。」
バルザックは19世紀のフランスの作家ですが、その表現力に圧倒されました。
パリという都市の光と影、人々の欲望、虚栄心、残酷さ、愚かさを強烈な言葉で描きます。
人間の探求という、小説というものの可能性、価値を感じる作品でもありました。
バルザックはある作品の登場人物を別の作品に再登場させることをしており、ある作品の脇役が別の主役になったりしています。
そうして1つの世界観を共有する90ほどの作品があり、フランス社会のあらゆる人間を描いたとされています。
わざわざ翻訳されるほどの作品はやはりそれだけの面白さがあります。
みなさんもぜひ読んでみてください。
最近はジイドという作家を読んでいるので、そのうち紹介するかもしれません。
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4、おまけ(高橋の世界各国つれづれ訪問記)
高橋が過去に訪れた国を紹介するコーナーです。読んでも特に何の役にも立たないので読みたい人だけどうぞ(笑)。第8回はメキシコです!
首都:メキシコシティ
最大都市:メキシコシティ(中南米最大の都市。標高は2,240m。)
面積:1,960,000平方キロ(日本のおよそ5倍)
人口:約1億2600万人(日本とほぼ同じ)
一言メモ:世界最大のピラミッドは実はメキシコにあります。(ちなみに、世界で一番高いピラミッドはエジプトのクフ王のピラミッド。)
メキシコシティの中心部にたどり着き、右も左も分からぬままうろうろしていると屋台の兄ちゃんが「ハポネス(日本人)?」と聞いてきて、「そうだ」と答えると、寝る仕草をしながら「オテル(ホテル)?」と聞いてくれ、「そうそう」と答えました。その時点でもう私の周りに人だかりができて、その中の一人が連れて行ってくれたのが、1軒の日本人宿でした。
日本人宿とは日本人旅行者の多くが集まる安宿で、世界各地にあるのですが、メキシコシティーの日本人宿はメキシコ人女性と結婚した日本人が経営していました。
その宿には1週間ほど滞在したのですが、そこには「オクムラ」という日本人プロレスラーも滞在していました。
私自身はプロレスは全く無知なのですが、メキシコのプロレスは「ルチャ・リブレ」と呼ばれ、独自に発展した文化を持っており、メキシコに武者修行をしに来る日本人選手もいるそうです。私が奥村茂雄選手に会ったのは、彼がメキシコに渡ってから半年後のことでした。
同宿していたルチャ・リブレマニアの人から「プロレスの素晴らしさ」についていろいろ話を聞いた(聞かされた)私は、二日後にある奥村選手が出場する試合を、宿に泊まっていた何人かと一緒に見に行くことにしました。
私が奥村選手と初めて会ったのは翌日の朝食の時間でした。
その際に、「明日の試合応援に行きますので、頑張って下さい!」と声を掛けたのですが、もともと人と話すのがあまり得意でないのか、あるいは旅行者とは群れない方針なのか、彼の態度は非常にぶっきらぼうでした。
しかし、当時大食いだった私は、奥村選手と二人で宿泊者全員の3日分の朝食用パンを食べ尽くし、奥村選手に「コイツはタダモノでない」と思われたようで(笑)、その後いろいろ話をしてくれるようになりました。(朝食は宿代に含まれており一応「食べ放題」でしたが、後でオーナーから「食べ放題と言っても限度があるでしょ」と怒られました、、、。)
「○○とか××(←日本の有名プロレスラー)は、トレーニングよりも女を追っかけまわしているような感じだった。でもメキシコでは、朝に俺が道場に行くともう超一流の人気レスラーがトレーニングしているんだよ。その日の夜には試合があるっていうのにさ。しかも彼らは俺のような前座じゃなくてトリもトリ、一番最後の試合に出るんだよ。一日の一番最後に登場するヤツが一番朝早く来ているんだよ。」
「彼らの努力は並大抵のことじゃない。俺は彼らを知ることができただけでもメキシコに来て良かったと思っている。」
、、、という話をしてくれたのが、一番印象に残っています。