高等部ブログ
リード通信Vol. 26バックナンバー
2025/03/29
リード予備校忠節校こんにちは、忠節校の高橋です。
リード通信のバックナンバーをまた1つあげておきます。今回は2023年12月号です。
これでようやく2023年に出したリード通信の全てを紹介し終わりました。来週から2024年のものをアップしていきます。(気が向けば、ですが(笑)。)
情報は掲載当時のものになるので、ご注意下さい。
※※※※※
リード通信Vol. 26 (2023年12月号)
(なるべく)毎月1日送信。ただしいつまで続くかは??
1,今月のお話
今回は「法学」とは一体何?という話です。
当然法律について勉強する学問なわけですが、「そんなことして一体何が楽しいの?」と思う人も多いのではないでしょうか。(私もそう思っていました。)
法学と言っても様々な分野があります。例えば、
法史学:「うちの校則ってどんな経緯で作られたのだろう」
比較法学:「うちの校則が他の高校の校則と違う点はどこだろう」
実定法学:「うちの校則の第15条に、緊急時以外は廊下を走るな、とあるけど、漏らしそうになったときは緊急時に当てはまるのだろうか」
法哲学:「そもそもこの第15条は本当に僕たちにとって必要なのだろうか」
この中でも法学部の多くの学生にとっては「実定法学」がメインの学習となります。
「緊急時」という抽象的な文言について、「漏らしそう」という具体例が果たして当てはまるのかを、様々な要因(走った場合の危険性や漏らした場合の周囲への影響)や過去の判例(A君のケースでは先生に怒られたけど、B君のケースでは怒られなかった)を「天秤にかけながら」検討するのが実定法学です。(弁護士バッチに天秤のデザインが描かれているのは、これこそがまさに弁護士の仕事だからです。)
では、そんなことをして一体何が楽しいのか?
上ではたとえに校則を使いましたが、もちろん法律は校則と違います。
その時々の為政者・立法者が人々の価値観、社会状況、当事者利益等、様々な事象について熟考に熟考を重ね(あるいは不心得に不心得を重ね)作り上げた(あるいはでっち上げた)「作品」です。この作品は、この世に出るまでに、そして出てからも数多くのドラマを生んできました。
しかも、この作品は我々の日々の生活に大いなる影響を及ぼしています。店で買い物したら民法555条により「売買契約」を結んだことになりますし、学校・塾・会社で許可なくスマホ充電すると刑法235条及び245条により「窃盗罪」となります。私たちの社会活動すべてがこの作品無しでは成り立ちません。
そして、社会の進展に合わせて、この作品の解釈も(さらには作品それ自体ですら)ダイナミックに変わっていきます。
こんなすごいものを研究するのが法学です。
この作品を研究することは、すなわち社会を研究することと同義です。法学部では社会の仕組みを理解することはもちろん、社会問題の原因をみつけ、分析し、解決するスキルも獲得することが可能になるでしょう。
結論:法学部以外に進学する人も、ぜひ大学の教養課程で法学の授業を受講することをお勧めします!
高橋
※※※※※
2、田辺の一冊 田辺の独断と偏見で本を紹介します。
辻仁成『白仏』
いろいろ方面で活躍しているらしい作者ですが(あまり詳しくない…)、小説もすごく良いものを書きます。
『サヨナライツカ』という作品も良いですが、この『白仏』はまさに傑作といってよいと思います。フランスでフェミナ賞という文学賞をを受賞しています。
福岡の筑後川下流の大野島に生きた作者の祖父をモデルにした小説です。
主人公の稔は、日露戦争や世界大戦の激動の中を鍛冶屋として生き抜きますが、初恋の人の死、兄や父の死、幼馴染の死、息子の死、戦場で殺したロシア兵、自分が修理した鉄砲が殺した人々、あらゆる死を受けつつ、絶えず生きることの意味を問い続け、晩年、島に埋まっている遺骨で仏を彫ることを思いつきます。
「骨仏の準備をしながら、わたしは人の生の意味を考え続けてきたとです。それは死を見つめることからはじまったとです。~死は思考を越え、存在を越えた深い宇宙ですばい。~生きたもんのそばに在ること、それが安らかな死と思うとです。」
生と死とは人間存在の本質にかかわるテーマです。死をみつめることによってはじめて生きるの意味も生じてくるのだと思います。この作品は作者が自身のルーツを探ろうとしたことが執筆動機の一つのようですが、その問いは普遍的な人間の問いへとつながっています。
読みやすい文体ですので、ぜひ読んでみてください。
※※※※※
3,高橋の各国つれづれ訪問記
高橋が過去に訪れた国を紹介するコーナーです。読んでも特に何の役にも立たないので読みたい人だけどうぞ(笑)。今回は北マケドニアです。
首都:スコピエ
最大都市:スコピエ(人口約62万人)
面積:約2.6万平方キロ(九州の約3分の2)
人口:約207万人
一言メモ:旧ユーゴスラビアの一国。1991年の独立後の国名は単に「マケドニア」だったが、その名称はお隣のギリシアも含む地名だったためギリシアが猛反発。長年にわたる交渉の末、2019年に現在の国名に変更となった。
日本を発ってちょうど1年が経った8月末、首都スコピエからバスで4時間半ほどのところにある山間の町オフリドに着いたのは4時過ぎでした。
オフリドはオフリド湖に面した歴史のある町で、ユネスコの世界遺産に登録されています。街のあちこちに建てられた古い教会建築群が見どころです。
中でも湖畔にせり出した高台の上に立つ、まるで中世の城のような重厚な建物の聖ヨヴァン・カネオ教会が素晴らしいです。
宿にチェックインした後、早速いろいろな教会建築物を見て回り、最後に聖ヨヴァン・カネオ教会に着いたのはもう夕刻でした。
教会の裏手にあるちょっとした崖によじ登ってみました。そこからは、湖の向こう側に沈みゆく夕日とその光を浴びて黄金色に輝く聖ヨヴァン・カネオ教会の建物、刻一刻と色が変わっていく湖と雲一つない大きな大きな空を見ることができました。
普段の生活では、忙しすぎてなかなか「自然の美しさ」や「自然の素晴らしさ」に気付くことはありません。
でも、まさに今この瞬間、世界のあちこちで、自然がそのかけがえのない美しさを見せてくれている。
このことを「単なる知識」としてではなく、「実体験」として知ることができたことが、もしかしたら私にとって旅をしたことの一番のメリットだったのではないかと思います。
オフリドのあの夕景は、何十年たった今でも私の頭の中で鮮明に再現することができます。