高等部ブログ
リード通信Vol. 27バックナンバー
2025/04/19
リード予備校忠節校忠節校舎の高橋です。
春期のドタバタがひと段落して、ようやく通常運転に戻った感じです。
例年のことですが、忠節校舎では100名をはるかに超える新高1の方に継続して頂きました。本当に感謝の限りです。
本当にお恥ずかしい話なのですが、年を取り、(体は元気なものの)頭の方が大幅に劣化してしまっている私は生徒の顔と名前を一致させるのに苦労しています、、、。(生徒の皆さんは名前の呼び間違いがあってもしばらくの間は寛容にお願い申し上げます(笑)。)
リード通信のバックナンバーを1つあげておきます。今回は2024年1月号です。
情報は掲載当時のものになるので、ご注意下さい。
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リード通信Vol. 27 (2024年1月号)
(なるべく)毎月1日送信。ただしいつまで続くかは??
1,今月のお話
グラフェンという素材をご存じでしょうか。
多くの高3生は知っているでしょう。なぜなら昨年度の共通テスト英語追試験の第6問Bでグラフェンを紹介する文章が出題されたからです。(昨年度の共通テスト追試験をまだ解いてない高3生は共通テスト本番までに必ず解きましょう!)
実は私自身は共テ追試験を解くまでグラフェンの存在を知りませんでしたが、実は非常に有名な素材です。
鉛筆の芯はグラファイトという炭素のカタマリで成り立っています。(グラファイトに熱と膨大な圧力をかけ続けると最終的にダイヤモンドになります。)グラファイトは薄い炭素の層から成り、この層は簡単に分離します。(鉛筆で書いた跡はグラファイトが分離したものです。)
2004年、マンチェスター大学の研究者アンドレ・ガイム氏とコンスタンチン・ノボセロフ氏はグラファイトの層をセロテープで剥がす、という簡単な操作を繰り返すことで、最終的には単層のグラファイト(=グラフェン)を取り出すことに成功しました。この功績により二人は2010年にノーベル物理学賞を授与されています。
グラフェンの驚異的な特徴については、共通テストの文章が簡潔にまとめてくれていますので、紹介します(訳は高橋):
「グラフェンは原子1つ分の厚さしかなく、おそらく宇宙全体で最も薄い素材である。(中略)さらに、それは地球上で知られている中で最も軽くかつ強い物質である。それは優れた電導性を有し、実際、20度から25度の研究室の室温では、私たちが知るどの物質よりも速く電気を伝える。」
上記以外にも、グラフェンには透明(98%の光を透過する)とか、しなやか(ダイヤモンドの同じ強度なのに折り曲げられる)とか、密度が高い(ヘリウムガス分子すら通さない)等の驚異的な特徴があり、まさに「スーパーマテリアル」と言えます。
グラフェンは多種多様な分野への活用が期待されていますが、その中でも代表的なものにトランジスタがあります。トランジスタとは電気の流れをコントロールする部品で、電化製品のほとんど全てに使われています。
トランジスタの電気の通り道(チャネル)にはシリコンが使われています。これまではトランジスタを小型化することで高速化、省電力化を達成してきましたが、小型化にはおのずと限界があります。しかし、グラフェンの電子移動度はシリコンの約100倍なので、シリコンをグラフェンに置き換えることができれば、理論上は100分の1の電力で動作可能になります。
グラフェンは現状では製造コストが高いため、産業界で本格的な商業利用には至っていません。しかし、実用化できれば、プラスティックの登場が世界にもたらした変化と同規模の変化をもたらすことでしょう。
高橋
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2、田辺の一冊 田辺の独断と偏見で本を紹介します。
小林秀雄『読書について』
小林秀雄の名を一度は聞いたことがあるかと思いますが(?)、日本の文学に大きな影響を与えた人物です。小林秀雄によって、西洋文明を受け止めた日本語での思索は始まったといえます。
この『読書について』は読書の技術について書いたもので、小林の著作の中でも比較的わかりやすいものですが、ガツンと来る言葉が並んでいます。
「書物が書物には見えず、それを書いた人間に見えて来るのには、相当な時間と努力とを必要とする。人間から出て来て文章となつたものを、再び元の人間に返す事、読書の技術といふものも、そこ以外にはない。」
「何故人間は、実生活で、論証の確かさだけで人を説得する不可能を承知し乍ら、書物の世界に這入ると、論証こそ凡てだといふ無邪気な迷信家となるのだらう。」
「間に合はせの知識の助けを借りずに、他人を直かに知る事こそ、実は、ほんたうに自分を知る事に他ならぬからである。人間は自分を知るのに、他人という鏡を持つてゐるだけだ。」
「大部分の小説読者は、耳を塞いで冒険談を読む子供と少しも変らぬ読書技術で小説に対してゐる。つまり、小説は、今日でも、読者の空想を刺戟して我を忘れさせる便利な機会を、未だ十分に世間に提供してゐる。だが将来はどうなるだらう。」
小説であれば、作中の人物になりきって自分を忘れて楽しめることが魅力ではありますが、それだけではだめだといいます。受身ではなく、絶えず自問自答して、読者も作品を創ることに参加しなくてはいけない。答えを求めずに、じっくりと読むことで、書いた人間が現れてくるし、自分を知ることもできるのだといいます。
小林が亡くなってから40年、書物以上に人を刺激して我を忘れさせてくれるものは世にあふれています。読書の技術を身につけなければ本を読まなくなるのは当然でしょう。
私も空想の世界に遊ぶのではなく、「自分を知る」読書になっているかはあやしいものです。この『読書について』は3~4回読み返していますが、そのたびに自分の未熟さを思い知らされます。
この正月は、小林秀雄の晩年の大著『本居宣長』をじっくり読みたいと思います。
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3、高橋が過去に訪れた国を紹介するコーナーです。読んでも特に何の役にも立たないので読みたい人だけどうぞ(笑)。今回はニカラグアです。
首都:マナグア
最大都市:マナグア(人口約140万人)
面積:約13万平方キロ
人口:約662万人
一言メモ:ニカラグア湖は淡水なのにサメが生息している。
私にとってのニカラグアのハイライトはグレープフルーツです。
中米にあるニカラグアは火山と湖の国です。国土は北海道と九州を合わせた大きさしかありませんが、国内最大の湖ニカラグア湖はなんと琵琶湖の12倍の大きさを誇ります。
その湖の中に、オモテペ島という2つの火山からなる島があり、ニカラグアの主要観光地になっています。
島内の未舗装ガタガタ道を自転車で丸一日かけて走ってようやく辿り着いたマヨガルパという集落から見る火山と湖の景色も素晴らしかったのですが、それよりもマヨガルパの宿で2人の韓国人女性と出会えたことが私のオモテペ島滞在をより一層楽しくしてくれました。
2人はそれぞれ一人旅だったのですが、前の国ホンデュラスで出会ってから一緒になったそうです。(また、私自身もそのうちの1人とはグアテマラの宿で一緒でした。もう1人とはこのときが初対面でしたが、その後南米で何度も再会することになります。このように、「あれ、また会ったね」というのは長い旅をしていると比較的よくあることです。)
2人は私よりもスペイン語が堪能で、情報もたくさん持っていたので、マヨガルパ滞在中はあちこちに案内してもらいました。(というか、2人とも可愛かったので離れたくなかった、というのが正直なところです(笑)。)
ある日、夕食を食べるために、彼女たちに案内されてとある食堂に入りました。
そこには広い中庭があり、グレープフルーツをたわわに付けた木がたくさん生えていました。その食堂で食事をする客はグレープフルーツを自由に木からもいで、食べていいことになっていました。
木で完熟したグレープフルーツって、とてつもなく甘いんです。それをこのとき初めて知りました。