高等部ブログ
リード通信Vol.19バックナンバー
2025/02/08
こんにちは、忠節校の高橋です。
先週土曜日にリード通信のバックナンバーを載せた際に、「生徒の皆さんに向けて書いているのですが、生徒からの反応は全くと言っていいほどありません(笑)」と書きましたが、その後何人かの生徒から「読んでます!」と反応があり、うれしい限りです(笑)。
今日もバックナンバーを1つアップします。これから週1のペースで上げていこうと思っています。(そのうち面倒になるので、いつまでやるかは分かりませんが(笑)。)
情報は掲載当時のものになるので、ご注意下さい。
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忠節校限定! リード通信Vol. 19 (2023年5月号)
(なるべく)毎月1日送信。ただしいつまで続くかは??
1、今月のお話
今回は文系人間の高橋が理系最先端の研究ともいえる「量子物理学」について説明します。破綻しそうなニオイがプンプンしますが(笑)、お付き合い下さいませ。
初めてノーベル賞を受賞した日本人が誰だかご存知でしょうか。
湯川秀樹博士です。1934年、彼は中間子という、原子核がバラバラにならないように結びつける力の存在を予想しました。
以来、素粒子(人類が今の技術で解明できる一番小さな粒)の研究は進み、現在までに17種類の素粒子が発見されています。実際、この世のほとんどあらゆるものはこのたった17種類の素粒子から成り立っているそうです。
しかしこの理論の問題点は、素粒子をサイズのない、数学的な「点」と表現していることでした。しかしサイズがゼロというのはあくまで近似で、現実にはサイズがゼロなら存在しないことになってしまいます。
この問題を解決する理論として、近年物理学者の注目を集めているのが「超ひも理論(超弦理論)」です。この理論によると、素粒子は点でなく、1次元的な「ひも状」をしているそうです。
そして現在17種類見つかっているとされる素粒子は、実は「ひも」の振動パターンが17種類(あるいはまだ見つかってないものも含めてそれ以上)あるというだけで、実は「ひも」自体は1種類しかない可能性があります。
現状では、星の運動や重力といったマクロな物理現象を説明する際には相対性理論を使います。一方、「光がなぜ存在するのか」といった分子・原子より小さいミクロな物理現象を説明するのは量子力学の分野です。しかしながら、この2つの理論は実は相反する理論であり、一緒に考えようとすると途端に矛盾が生じてしまいます。
超ひも理論は、この問題を解決してくれます。
「素粒子を観察すると、ひも状をしていた」という実験結果は今のところありません。しかし、もしこの理論が正しければ、これ1つでこの世のあらゆる物理現象を数学的に説明出来てしまうことになります。これは究極の理論であり、全く新しい科学の登場です。
さらに面白いのは、この超ひも理論によると、この世界は9次元でないと数学的に矛盾が生じるそうです。
1次元(線)の世界に住む生き物は2次元(面)の世界を見ることはできません。2次元の世界に住む生き物は3次元(空間)の世界が見えません。それと同様に、3次元の世界に生きる我々にはそれより上の次元は認識できません。
でも「認識できない」イコール「存在しない」ということではない、ということですね、、、。
大学物理どころか高校物理すら分かっていない人間が書いたので、もし内容に間違いがあったらすみません(笑)。でも、「なんかよく分からないけど、面白そうだな」と思ってくれるリード生が1人でもいてくれれば幸いです。
高橋
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2、田辺の一冊 田辺の独断と偏見で本を紹介します。
カール・ポパー「科学−推測と論駁」
ポパーはこの本で科学と疑似科学の区別はどこにあるのかを論じています。
ポパーは当時流行していたマルクスの歴史・経済理論やフロイトの精神分析、アドラーの心理学に疑問をいだきました。アインシュタインの相対性理論とこれらの疑似科学(とポパーが考えているもの)はどこが異なっているのか。
ポパーが疑問に思ったのは、その理論でなんでも説明できてしまうことでした。
「あらゆる考えられる事例が、アードラーの理論や、同じくフロイトの理論に照らして解釈できる」
「子供を溺れさせようとして水に落とす人と、子供を助けるために自分の生命を犠牲にする人の例によって示すことができましょう。いづれの例も同じくらい容易に、フロイト流の用語でもアードラー流の用語でも説明することができます。フロイトによれば、最初の人間は(エディプスコンプレックスの)抑圧に苦しんでいるのに対し、二番目の人間は昇華を達成したわけです。アードラーによれば、最初の人間は劣等感に苦しんでおり、二番目の人間も同様であると」
どんな事例もその理論で説明できてしまうこと、その議論の見かけ上の強さが実は弱さであるとポパーはみなします。(フロイトらの理論をまったく意味がないとは言っているわけではありません)
そして、ポパーは「間違いの可能性」こそが科学の証であるという逆説にたどりつきます。
例えば「すべてのカラスは黒い」という命題は、白いカラスが発見されれば間違っていると反証されます。
そのように、ある理論について「もし~ならば間違っている」のようにいえる可能性があることが科学の条件である。そして、実験を繰り返しても反証されてない理論を(反証されるまでは)正しいだろうと認める、これがとるべき態度だと。
それに対して、どんな事例でも理屈をこねて説明してしまう理論は、正しいのかチェックすることができず、科学とは呼べないのだと。
この「反証可能性」があるものが科学だという考えは世界に大きな影響を与えました。
フロイトらを批判する議論は多くありますが、この角度から批判するポパーを初めて知った時はとても驚きました。
特に文系の学問は、やはり本当に正しいのか判断するのが難しい場合は多いと思います。
悪い言い方をすると、インチキな議論が出回っている部分があることは否定できないと自分は思っています。(理系分野でも間違った理論が正しいとみなされることはありますが、反証されやすい)
ある現象を、ある理論で説明できるように見えるからと言って正しいとは限りません。しかしなかなか実験して確かめることもできません。
では、どのように理論を根拠づけたらよいのかというと、、、自分にはわかりません、、、。
ともかくも、偉い先生が言っているから正しいという権威主義に陥らず絶えず疑う視点をもつこと、わからないことは素直にわからないと認めることが大事といえるぐらいでしょうか。
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3、高橋の各国つれづれ訪問記
高橋が過去に訪れた国を紹介するコーナーです。読んでも特に何の役にも立たないので読みたい人だけどうぞ(笑)。第19回はスペインです!
首都:マドリード(人口約322万人)
面積:約506,000平方キロ(日本の約1.3倍)
人口:約4,742万人
一言メモ:オリーブオイルといえばイタリア料理が思い浮かぶが、オリーブオイルの生産量世界一はイタリアでなくスペイン。総生産の半分を占めている。
スペインは歴史的にもイスラム王朝による支配やその後のレコンキスタ(キリスト教国家による再征服)があったりして、多様な文化が入ってきているため、文化遺産が豊富にあります。(実際、スペインでは実に49件も世界遺産に登録されています。)
その中で、私が実際に訪れて特に感銘を受けたのは、バルセロナにあるサグラダ・ファミリアとグラナダにあるアルハンブラ宮殿です。前者は鬼才アントニ・ガウディが設計した大聖堂で、後者はスペインで最後のイスラム王朝の宮殿です。どちらも世界的に有名すぎるくらい有名な建築物です。
サグラダ・ファミリアは最寄りの地下鉄駅から地上に出るとすぐに目の前にそびえ立っています。建物のデザインが片側は未来的な感じがするのに対し、反対側はガウディの真骨頂とも言える曲線のオンパレードで、私が思わずイメージしたのはジャングルでした。
どちらの側にも4本の尖塔が建っていて、その1つに登れるのですが、これは本当に恐怖体験でした。あちこちに出窓があって、下を覗くとまるで自分が空中にいるような感じになります。(現在は上りはエレベーターで階段は下り専用のようですが、当時はどちらも階段でした。)
アルハンブラ宮殿ですごいのは、何と言っても一番メインの王室の間でした。天井には星空を模したかのような彫刻が埋め込まれており、壁には植物をモチーフにした気の遠くなるほどの幾何学的な模様が彫られています。コーランから取られたらしい文字もあり、これはイスラム教徒にとっては「全て」とか「完全なる空間」を表すのだろうな、と思いました。
私自身はそれほど建築に興味がある訳ではないのですが、それでもこの2つの建物には本当に度肝を抜かれました。サグラダ・ファミリアの猟奇的とも言える壮大な曲線美も、アルハンブラ宮殿の全宇宙を閉じ込めたかのような超絶難解な幾何学模様も、人間の思想、信仰、技術、そして何よりも魂の崇高さをまざまざと見せつけてくれるこれ以上ない傑作だと思います。
ちなみに、サグラダファミリアは現在も「建設中」なのですが、いよいよ2026年に完成予定です。ぜひ完成した姿をこの目で見てみたいのですが、スペインはさすがに遠い、、、。