高等部ブログ
リード通信Vol.15 バックナンバー
2023/09/27
こんにちは。
水曜日は長良校舎にいる高橋です。
前期期末は岐山高校は昨日で終了。長良高校は明日までですが最終日は英語の試験がないそうで、やや手持無沙汰な状態です。
、、、夏の間ず~っとこちらにアップできなかったリード通信のバックナンバーですが、2カ月ぶりに1つアップしておきます。(これからもう少しアップする頻度を上げていこうと思います。)
今回のものは2023年1月号です。情報は掲載当時のものになりますので、ご注意下さい。
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忠節校限定! リード通信Vol. 15 (2023年1月号)
1、今月の予定(省略)
2、今月のお話
推薦入試の志望理由書作成の指導をしていると、世の中で現在起きている最先端の技術革新について学べることが多くあります。今回は今年の推薦入試で合格したある生徒の志望理由書の内容からのお話です。
日本人の死因の約3分の1を占めるのが皆さんもご存じのがんです。がんが厄介なのは、一度治癒しても再発・転移を引き起こしてしまうことです。この「再発・転移」こそががん治療における最大の壁であり、多くの患者を苦しめています。
ではなぜがんは再発・転移をするのか。これまでの度重なる研究の結果、がん幹細胞の存在が明らかになりました。
がん幹細胞というのは言わばがん細胞の親分ですが、それ自体は人体に悪さはしません。しかし、それが細胞分裂すると一方は再度がん幹細胞になり、もう一方はがん細胞になります。そして後者は急激に細胞分裂を繰り返し増殖しながら正常な細胞から栄養分を奪い、体を衰弱させます。
細胞は分裂するときに防御が弱まります。抗がん剤や放射線治療ががん細胞をやっつけることができるのは、がん細胞が分裂する隙を狙って攻撃をするからです。しかしがん幹細胞は細胞分裂の速度が非常に遅く、ほとんど休眠状態なため、従来の治療法ではびくともしません。
つまり、がん治療でがん細胞は退治できてもがん幹細胞が生き残ってしまうため、がんの再発が起こるわけです。
逆に言うと、がん幹細胞を退治できるがん治療薬が開発されれば、がんの再発を防ぐことができるようになります。
がん幹細胞を標的とした薬の開発研究は日本でも多くの大学が手掛けています。その中の1つが我々の地元にある岐阜薬科大学です。岐阜薬科大学の薬理学研究室は2022年1月に「がん幹細胞の機能を制御するスイッチ」を世界で初めて発見しており、本当の意味でのがんの根治が可能になるのはもしかするとそう遠くない未来なのかもしれません。
、、、ちなみに、忠節校舎スタッフのTさんは現役の岐阜薬科の学生ですが、彼女は別の研究室で「プラズマを使用したがん治療」について研究しているそうです。(なぜプラズマががん治療に役立つのかは文系人間の私にはさっぱり分かりません(笑)。)興味がある方はぜひ彼女に聞いてみて下さい。
高橋
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3、田辺の一冊 田辺の独断と偏見で本を紹介します。
髙樹のぶ子『小説伊勢物語 業平』
伊勢物語を現代語訳ではなく、小説化することで表現しようとした作品です。
伊勢物語は歌物語というジャンルに分類されています。これは歌の詞書(どんな状況でその歌が詠まれたかを簡単に説明する文)だったものが発達して、物語化したものです。そのため心情などがあまり細かく書かれておらず、歌が詠まれた状況や出来事を淡々と説明するような文章になっています。
その簡潔な文と歌が、かえって表現されていない心情を想像させ、なんともいえないもの悲しさのようなものを感じさせます。
これは他の古典を読んでいてもなかなかない感覚で、伊勢物語が長く読み継がれてきたわけだと思っています。
(伊勢物語はそれほど長くなく、比較的読みやすいので、読んでみることをおすすめします。)
これを現代の言葉で表現することはできるのか。ただ現代語訳するだけではだめでしょう。
小説化するというのもなかなか難しそうで、下手をすると伊勢物語の皮をかぶっただけのつまらない恋愛小説になってしまうでしょう。
作者の想像力と技術とにかかっているわけですが、この小説は原文では書かれていない部分がうまく想像し描かれていて、独特な文体が古典の世界、業平の生き方を表現することに見事に成功しているように見えます。
有名な東下りの場面。
名にしおはばいざ言とはむみやこ鳥
わが思ふ人はありやなしやと
その名前に都という名を背負っているのなら、都のことはよく知っているはず。ならば問いたい。私が思いを寄せている人は、健やかであろうか、それともそうではないのか。
ああ、案じられることよ。
この思いは、業平のみならず、みな同じでありました。業平は、一同の都への心持ちを合わせて、歌にしたのです。
書き付けたものを、憲明が声にて詠いあげます。
川風は流れと同じく、上より下へと来て、さらに海の方へと行きて戻りません。
風の流れも、元には返らず、この舟に乗る皆もまた、都へは戻れぬと思えば、それぞれに袖を顔に当て、涙を拭うのでした。
都鳥ばかりが、賑やかに鳴き交い、白い羽根も赤い嘴や脚が一同の顔近くに寄り、涙に濡れた顔を覗き見ております。
これ自体よい作品ですし、古文の勉強にもなるのでぜひ読んでみてください。
同じ作家では、二人の女子高生の友情と別れを描いた『光抱く友よ』という短編小説も好きな作品です。
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4、おまけ(高橋の世界各国つれづれ訪問記)
高橋が過去に訪れた国を紹介するコーナーです。読んでも特に何の役にも立たないので読みたい人だけどうぞ(笑)。第15回はグアテマラです!
首都:グアテマラシティ(中央アメリカの最大都市。人口約200万人)
面積:約109,000平方キロ(日本の約3分の1)
人口:約1,685万人
一言メモ:グアテマラの国鳥であるケツァールという鳥は、手塚治虫の漫画「火の鳥」のモデルになっています。
スペイン植民地時代の都であったアンティグアという町は、当時の建築物が残っていて世界遺産にもなっている町です。この町には「ペンション田代」という有名な日本人宿があり、ラテンアメリカを旅する日本人バックパッカーが集まってきます。
日本人宿にはたいてい多くの本が置いてあって、宿泊者は自由に読めるようになっているのですが、ペンション田代にも面白そうな本がたくさん置いてあり、しかも面白そうな本ほど長編だったりします。(「竜馬がゆく」なんて読み始めたら最低でも3泊はしないといけなくなります(笑)。)
オーナー田代さんによる「宿泊者を長期滞在させるための策略」にマンマとはまった私は自転車そっちのけで来る日も来る日も読書に励むことに、、、。
また、同室になった旅行者達も面白い人たちで、整体師を目指している料理が神レベルのイケメンK君、いつも酒ばかり飲んでいる元エンジニアのY君、そんなY君にいじられてばかりいる早稲田大学休学中のO君(彼も自転車)、それに定職には一度も就いたことがない金持ちトレーダーのN君(彼はバイク)とは意気投合し、毎晩夕飯をシェアしてからの宴会をしていました。
そんなこんなで、ペンション田代にはなんと22連泊。まさに「沈没」でした。(「沈没」とは、旅をしているはずなのに一か所にずっと滞留してしまうことを表すバックパッカー用語です。)。
「同志たち」は皆南アメリカを目指していたので、その後あちこちで再会を繰り返し、そして日本帰国後も交流が続いています。(K君、N君は南米旅行中に奥さんになる人をゲットし、私もその結婚式に行ったりしました。)
、、、ペンション田代に22連泊した後、さすがにこのままではまずいと思い(笑)、訪れたのがグアテマラ北部にあるアティトラン湖です。アティトラン湖は現地では「世界一美しい湖」と呼ばれている湖です。
湖畔の宿で韓国人の女性と出会いました。彼女は現地で英語を教えるボランティアを始めるところだったのですが、住む場所が見つかるまでその宿に滞在していたのでした。
湖畔に砂を掘ると温泉が湧き出るところがあったのですが、そこで足湯をしながら将来について話をしたり、夕日に染まる中、お互いの国の歌を披露し合ったりする内に恋に落ちてしまったり(笑)、ということもありました。
訪れた場所の記憶は時と共に薄れていきますが、出会った人とのつながりは一生続く宝物になる可能性があります。これこそが旅の一番の魅力なのだと思います。