高等部ブログ
リード通信Vol. 9 バックナンバー (2022年7月号)
2023/04/21
こんにちは。忠節校舎で英語を担当している高橋です。
本当に本当に多くの新高1生を迎えることができて、忙しいながらも充実した新年度をスタートすることができました。本当に感謝しかありません。
私自身は体はまだまだ元気なのですが、近年記憶力の低下が激しく、まだ顔と名前を一致させるのに一苦労してます。
老体に鞭打って頑張りますので、もし名前の呼び間違いがあったらご容赦頂きたく(笑)。
さて、しばらくサボってましたが(笑)、リード通信のバックナンバーをまたアップしておきます。今回は昨年の7月に配信した第9号です。記載されている情報は当時のものですので、ご注意ください。
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忠節校限定! リード通信Vol. 9 (2022年7月号)
(なるべく)毎月1日送信。ただしいつまで続くかは??
1、今月の予定(省略)
2、今月のお話
人工光合成という技術をご存知でしょうか。
植物は太陽光と水と二酸化炭素からデンプンなどの炭水化物を生成し、さらに酸素を放出します。このプロセスを光合成と言いますが、これを人間の手で行うのが人工光合成です。
太陽光という無限に存在するエネルギーを利用して、工場や発電所等から大量に排出される二酸化炭素を回収し、有用なエネルギーや化学材料に変えることができれば、現在厄介者扱いされている二酸化炭素が貴重な資源に変わります。もちろん、地球温暖化の問題も解決するでしょう。
まさに夢のような技術ですね。
人工光合成が実用化していない大きな理由は、実用化できるほどの効率性を確保できていないからです。例えば太陽エネルギーによって水から水素と酸素を作り出すことはすでに可能です。しかし、現状ではあまりにも非効率かつ高コストであり、この変換効率を高めることが今後の課題です。
コップに入った水を日光に当ててもそれだけでは何も起こりませんよね。太陽光の力で水を酸素と水素に分解するには化学反応を引き起こす触媒が必要です(光触媒と言います)。
変換効率を高める方法は2つあって、1つ目は量子収率を高めること(簡単に言うと変換の「密度」を高めること)ですが、これは信州大学、山口大学、東京大学の共同研究でそれまで10%前後であったものを世界で初めて100%近くまで引き上げることに成功しました(これ自体快挙と言えます)。
2つ目の方法は、紫外光以外の光に反応する光触媒の発見・開発です。現在の光触媒は太陽光の中でも紫外光にしか反応しないのですが、紫外光は太陽光のたった5~6%を占めるにすぎません。太陽光の大半を占める可視光や赤外光に反応する光触媒が出現すれば変換効率は大幅にアップすることでしょう。
人工光合成の研究は日本が世界をリードしている(数少ない)分野であり、なおかつ今後の世の中を大きく変える可能性のある分野です。興味のある人は目指してみるのも良いと思います。
高橋
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3、田辺の一冊 田辺の独断と偏見で本を紹介します。
ニコラス・G・カー『ネット・バカ』
ふざけたタイトルに見えますが、(原題は『The Shallows』)
多くの論文を引用してネットの影響を研究した真面目な内容です。
筆者は、
「人間がなにか道具を使うと、それに応じて人間の能力や思考、認知も変化する」
という考えに基づいて話を進めます。
例えば、
T・S・エリオットという詩人が
(『四つの四重奏』『荒地』などの詩や、伝統や文化について考察した論文などが有名でかなりの影響力をもった人物です)
詩を手書きではなくタイプライター(キーボード)を使って書くようになってから、いつの間にか自分の詩から長いセンテンスがなくなり、短く明快なものなっていた。それが自分の詩にとってよいことかは分からない。と手紙に書いていた
というエピソードが紹介されたりしています。
手で書くか、機械で書くかでは、書く内容が変わってしまう。
それはつまり、人間の思考が変わってしまっているということになります。
ネットについても、使うとバカになるということではなく、
ネットによって人間の脳、思考は良くも悪くも変化するのであり、
向上する能力もあると述べています。
その中でみなさんに伝えたいのは、
ネットを使うことで、長時間何かに集中する能力が衰えるということです。
ネットでは、リンクをたどってページを切りかえて情報を探し出す作業が多く、
一つの文章を持続的に読むことはほとんどありません。
ツイッターや動画サイトなどでも、短くパッと見て分かりやすいことが意識されます。
その結果、短い文の読取や一瞬の判断を向上させますが、
その代償として長い文章を読んだり長時間考えることが、いつの間にかできなくなっていくと述べています。
筆者自身も、昔は何時間でも本を読み続けられたが、ネットを使い始めてから集中力が続かなくなったそうです。
(自分も思い当たる節はあります)
おそらくみなさんも長時間集中して勉強することが昔の高校生よりもできなくなっていると思います。
しかし、当然勉強する上でじっくり考える時間は必要です。
単語や公式だけ覚えても、それだけではだめなのはみなさんも分かっていると思います。
ネットを使わないことはもはやできませんが、ネットを排して何か一つのことに集中する時間を意識的につくることが重要です。
勉強しながらちらちらスマホをみたり、すぐ休憩したりする人は要注意です。
それを続けていると勉強時間が減ってしまうだけでなく、気づかないうちに集中する能力も衰えてしまいます。
ありがちな結論に落ち着いてしまいましたが、
ネットによる影響や、人間の脳についていろいろ学べる本ですので、興味があったらぜひ読んでみてください。
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4、おまけ(高橋の世界各国つれづれ訪問記)
高橋が過去に訪れた国を紹介するコーナーです。読んでも特に何の役にも立たないので読みたい人だけどうぞ(笑)。第9回はオランダです!
首都:アムステルダム
最大都市:アムステルダム
面積:41,540平方キロ(九州とほぼ同じ大きさ)
人口:約1744万人
一言メモ:世界で最もリベラルな国。大麻等のソフトドラッグ、売春、積極的安楽死等が合法。また同性婚を合法化した世界最初の国でもある。
「ただなんとなく」ユーラシア一周をした私ですが、オランダだけは訪れたい明確な理由がありました。
それは「フェルメールの絵を見ること」です。
フェルメールは17世紀半ばのオランダ黄金時代を代表する画家です。綿密な空間構成と、カメラのレンズ越しに捉えたかのような表現技法を駆使するところから「光の魔術師」と呼ばれています。非常に寡作な画家で、彼の絵は30数枚しか現存していません。
彼の最高傑作に、「真珠の首飾りの女」があります。
大学時代に面白半分で受講した美術史の授業でフェルメールの絵に衝撃を受けた私にとって、オランダのハーグの美術館に展示されている「彼女」に会いに行くことは、一年半にわたる旅の中で、数少ない「やるべきこと」の一つでした。
「彼女」に会えたときは本当に感無量だったのですが(←変態ですね、、、)、それ以外にもオランダでは印象深い出来事がありました。
夕刻アムステルダム駅からユースホステル(相部屋タイプの安宿)までの道すがら、あちこちに赤いネオンが点いた「窓」があり、中の女性達が外を歩く男性に向かって堂々と「営業」していたことにまずビックリ。女性も本当にキレイな人から、こちらが顔を背けたくなるようなケバい人まで千差万別。
ユースホステルには合法ドラッグを求めてヨーロッパ中から集まった日本人を含む多くのジャンキーの人たちがいました。「キノコ」を食べてあっちの世界にトリップしてしまい、現世ではただソファーに座ってゲラゲラ笑っている。彼らは皆本当に幸せそうでした。
オランダに入国したのはクリスマス・イブだったので、翌日のクリスマスには宿の近くの教会で行われるクリスマス・ミサに参加してみました。(信者ではないのですが。)
聖歌隊の人たちの合唱に感動した一方、ミサが終わって教会の一歩外に出ると、すぐそこの「窓」では売春婦たちが色気を振りまいて男性諸氏を誘っているという、このギャップ。
旅が「非日常の体験」であるならば、もしかするとオランダほど「旅」を感じさせてくれるところはなかなかないのではないかと思います。