高等部ブログ
高校生のときに読んだ本2 田辺
2021/06/15
みなさんこんにちは、田辺です。
多くの高校で前期中間考査が終わったところだと思います。1年生の皆さんは初めての試験はどうだったでしょうか。
勉強は積み重ねです。できなかったところは復習をしておきましょう。国語ならば、いまやっている古典文法をしっかり覚えるかどうかが、今後の3年間の古文の成績を左右することになりますよ。
さて、前回から少し期間があいてしまいましたが、
私が高校生の時に読んだ本の紹介第2弾として、今回は次の本を紹介します。
西尾幹二『ヨーロッパの個人主義』『ヨーロッパ像の転換』(講談社現代新書)
みなさんはヨーロッパについてどのようなイメージを持っているでしょうか?
現代文ではヨーロッパの特徴として「個人主義」「強い自我」などという言葉がよく出てきますね。
日本は明治以降近代化をして西洋の影響を強く受けてきたわけで、西洋の考え方を知ることは重要なことでしょう。
私はヨーロッパへは行ったことがなく本で読んでいるだけですので、実際どうなのかは正直わからないところもあるのですが、
この本からは自分は西洋の人々、社会に対するイメージが間違っている、もしくは表面的な部分しかとらえていなかったのではないかと考えさせられました。
今でも自分が物事を考える基盤になっている本の一つです。
筆者はドイツを中心にヨーロッパで様々な体験をするのですが、そこから思考を深め、ヨーロッパの生活、文化、芸術などを生み出している根本の精神・考え方をとらえようとします。
少し引用すると
「ヨーロッパの個人主義とは、個人性を滅却し、なにものかに奉仕することによって、はじめて個人性を獲得するというパラドックスをうちにはらんでいるのではないだろうか。」
「ヨーロッパにおいて『解放』という概念は、一つの共同体から解放され、他の共同体のなかへ拘束されていくという以上の意味を持っていなかった。~日本人の場合は、よくよく『家』単位、『会社』単位、『仲間』単位の目に見える小範囲の人間関係にしか他者への意識は及ばないのではないか」
「亡びるものは亡びるにまかせる感覚のないヨーロッパ人のこの過去への以上な執着心は、ひょっとすると、「自然」の暴威の前に裸身をさらすことのできない彼らの弱さに起因するのではないだろうか?」
「芸術はすべていつかは滅びるべき運命にあるのである。一時的にでもそのことを忘れさせる巨大な西洋の美術館や博物館の方が、美の確実性に関する錯覚の上に成り立っている一個の不条理のように私には思えたのであった。」
この筆者の優れているところは断定的な結論を下さず、絶えず自分の考えを疑って、思考を深めていくところにあると思います。一九六〇年代、筆者が三〇代のときに書かれた本ですが、現在でも読む価値が十分にある本です。
難しいところを引用してしまいましたが、平易な語り口で読みやすく面白い本ですので、ぜひ読んでみてください。きっとヨーロッパの見方を変えてくれるでしょう。
特に社会学や、国際系に興味がある人には読んでほしい本です。