高等部ブログ
講師列伝 数学スペシャリスト2@リード予備校
2020/07/14
こんばんは、リード予備校の佳山です。
リード予備校の数学のスペシャリスト、前回の菊地先生に続きまして、今橋先生の紹介です☆
この数学を教えている時の笑顔から数学好きが分かりますね☆
リード予備校 数学科 今橋 明宏
担当校舎:関校舎、忠節校
出身大学:名古屋大学 理学部 数理学科
名古屋大学大学院 多元数理科学研究科 数理学修士
専攻 可換環論(かかんかんろん)(commutative ring theory)
今橋先生よりコメント
前に登場した菊地先生の専門である「代数的位相幾何学」は,実は私も学部4年の頃にかじりました。「代数的位相幾何学」も「代数学」も,学部2年次や3年次の講義に触発されて興味を持ちました。理論そのものの魅力だけでなく,緻密に解説をされる先生方の姿にも感銘を受けたのです。
現在の私の数学の授業は,当時のその先生方の講義を目指しているような気もします。自習も重要ですが,ノートを取りつつ先生の話を聴く方が(特に数学では)圧倒的に効率がよいですし,誰がどんな語り方をするかはその後の勉強のモチベーションをも左右します。ましてや高校3年間の中で,お世話になる数学の先生なんて10人もいないでしょうから,私自身の責任も重大なのではと感じつつ,毎日,毎年,伝え方を工夫しながら教えています。
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数学のスペシャリスト今橋先生の専攻に興味があると思いますので、専攻内容「可換環論」の紹介。気合いれて読まないと何も内容が入ってきません。w
「代数学」という数学の太い幹から枝分かれした「可換な環を論じる」分野です。
「環」とは,加法(+)・減法(-)・乗法(×)が適切に定義された集合のことを言います。整数を集めた整数環,x^2+x+2などの多項式を集めた多項式環が代表例です。除法(÷)が定義されている必要なく,例えば整数環や多項式環において除法はできません。9÷2=4.5は整数ではないので。
しかし「9を2で割ると4余り1」のような“割り算”は考えられます。高2生は分かると思いますが,多項式環においても同様の“割り算”が可能です。他にも,倍数,約数,最大公約数,素因数分解など,整数環と多項式環には似た概念が存在します。
「加・減・乗」という抽象的な原理原則だけに注目し,似たものを集める,または違いを分析する。これはまさに数学の基本的な精神です。「代数学」ではこの精神が特に顕著であり,個人的には「これぞ数学」と思っています。
可換環論が太く育ち始めた20世紀初頭から研究されている環のクラスに「行列式環(determinantal rings)」というものがあります(ある複雑な条件で計算規則を定めた多項式環だと思って下さい)。一方「F正則性(F-regularity)」とは,(“割り算”ができる,素因数分解ができる,のような)環がもつ性質の一つで,30年前に研究が始まった大変新しい概念です。「どんな行列式環もすべてF正則である」ことが実は知られているのですが,既存の証明は現代の最先端の技術を駆使する大変難解なものでした。そこで,100年前の「原始的」な道具,ASL構造を用いてもっと簡単な証明を考えようというのが,私の修士論文のテーマです。
ひたすら具体例を計算していたある日,抽象論だけでは見えなかった対称性(本当は「双対性」という)に気付き,それを厳密な形に表現することで,F正則性の証明を完成させました。証明は先人の結果の言葉遣いを変えた上書きに過ぎませんが,証明の手掛かりとして利用した「対称性の厳密な表現方法」はまだ世に知られていない私独自の成果(定理)だったらしいです。
修士時代に専攻する分野で貢献したことは素晴らしいですね☆ さすがです! 修士の2年だけではなかなかそこまでいかない人がほとんどですが。
今橋先生は、お盆特訓でも担当しますので、まだ受けたことがない人は是非どうぞ☆
高1・2・3の講座を1つずつ担当します☆ 私ならとりますね☆